
スタジオ
友人である久保田愛建築士とともに、
小鳥が羽を休める木のように、素敵な人々が集まる建物であって欲しいという願いを込めて、とまり木という名前をつけました。

"「とまり木」は施主がこの建築につけた名前である。この名前を聞いた時、きっと良い場所に育っていくだろうなと嬉しく思えた。
「とまり木」は東京の羽根木に建つワンルームの賃貸とオーナーの住居が一体となった長屋である。
場所との付き合いの長さは人それぞれだ。
学生の間の数年だけ住む人もいれば、子育て含めて数十年その場所にとどまる人もいる。さらには先祖代々その地に住む人々もいる。
この長さが異なる人たちが共存することが健全な街につながるのではないか、そう考えた時、ワンルームの賃貸とオーナーの住居が一体となる形式は羽根木の地で魅力的に思えた。
羽根木は昔ながらの閑静な住宅街でもあり同時に、下北沢や渋谷に程近い上京したての若者が住む街でもある。
そのため、お屋敷と賃貸マンションが混在しているが、その2つの間につながりがあるのかは疑わしく思える。
これに対して、ワンルームの賃貸とオーナーの住居が一体となる形式であれば、おそらく数年で巣立っていく若者をその地に長く住むオーナーが見守り地域との橋渡しをする、そういう関係が気づけると思った。
敷地は羽根木の小さな十字路の角地である。
ここに、通りに面して地階と1階がメゾネットになった賃貸が3住戸、2階と3階がオーナー宅、という計4住戸の長屋を建てた。なんと、現場監督の仕事をするオーナーが自ら指揮を取り建てた力作である。それもあって、オーナーの建物への愛着は強い。工事中に近隣の方とも仲良くなっていた。また、この家は写真家のスタジオでもあり、小さな会社のオフィスでもある。
比較的長い時間をこの街の中で過ごしている彼らは、自然と街に溶け込み、見守り役を務めてくれている。
玄関と一体になったオーナー宅のテラスからは十字路に沿って街が見渡せる。大きな窓を持つ2階と3階をつなぐ階段からも同様である。日常の動線の中でふとした時に街を見渡すことができる家に住む彼らは、きっとこの先もお地蔵様と一緒にこの街を見守ってくれるだろう。
住民が住み始めてから3年が経ち、オーナーは日々手を加えながら、この場所を守っている。ここはまさに都会の中の「とまり木」である。"












